この記事の結論
大家のお金は3つのリズムで出ていきます=①買うとき(物件価格の7〜10%の諸費用)②毎月(ローン・管理委託料・管理費・修繕積立金・保険)③数年に一度(税金・退去1回で家賃2〜3ヶ月分・設備交換)。家賃と同じリズムでは出ていかないのが「儲かっているのに現金がない」の正体。対策は口座を1つ分けて、家賃収入の15%(きつければ10%)を毎月移すことです。
はじめくん
正直おじさん
はじめくん
正直おじさん家賃6万円の部屋で、手元に6万円は残りません
大家になって最初に驚くのは、家賃が振り込まれた翌月の通帳です。数字は増えているのに、なぜか現金の余裕がない。
理由ははっきりしています。賃貸経営で出ていくお金は、入ってくるお金と同じリズムでは動かないからです。家賃は毎月きれいに入ります。一方の支出は、毎月のもの、年に一度どんとくるもの、数年に一度いきなりくるものが混ざっています。このズレを知らないまま入ってきた分を使ってしまうと、給湯器が壊れた月に現金が足りなくなります。
だからこの記事では、大家のお金を「買うとき」「毎月」「数年に一度」の3つの箱に分けて並べます。金額を暗記する必要はありません。どのタイミングで財布に手が伸びるかを先に知っておくことが目的です。

なお、買う前の判断に使う利回りの計算は実質利回りの計算方法|広告の「表面利回り」を手取りに直すにまとめています。この記事は、買ったあとに毎月の現金がどう動くかの話です。
箱1:買うときにかかるお金(物件価格の外側)
物件価格とは別に、購入時の諸費用がかかります。中古の区分マンションなら、物件価格の7〜10%程度を別に用意しておくのが一つの目安です。1,000万円の部屋なら70〜100万円。ここを織り込まずに自己資金ぎりぎりで買うと、初日から現金がない大家になります。
中身は主にこの5つです。
- 仲介手数料:売買価格の3%+6万円+消費税が法律上の上限(400万円超の物件の場合)
- 登記費用:所有権の名義を移す登録免許税と、司法書士へ払う報酬
- ローン関係:事務手数料、保証料、契約書に貼る印紙税
- 火災保険・地震保険:数年分をまとめて前払いするのが一般的
- 固定資産税の精算金:その年の分を売主と日割りで分け合う
この中で、大家1年目がいちばんつまずくのが不動産取得税です。
はじめくん
正直おじさん不動産取得税は、買ったときに一度だけかかる都道府県の税金です。やっかいなのは請求が届くタイミングで、購入から半年〜1年ほど経ってから、忘れたころに納税通知書が郵送されてきます。住宅と土地は軽減税率が使えて本来の税率より下がりますが、軽減措置は期限が何度も延長されているので、購入時点の最新の内容を必ず確認してください。
やることは1つです。買った月に、取得税の分を別口座へよけておく。通知が来てから慌てて工面するのが、いちばん高くつきます。
箱2:毎月出ていくお金
毎月のものは金額が読めるので、実は怖くありません。怖いのは、この4つを合計せずに「家賃−返済」だけで手残りを計算してしまうことです。
1. ローン返済。元金と利息の合計。ここは誰でも計算に入れます。
2. 管理委託料。管理会社に任せる場合、相場は家賃の5%前後です。任せるか自分でやるかの判断は管理委託 vs 自主管理|管理会社の「中の人」が正直に比較する判断基準で詳しく書いています。
はじめくん
正直おじさん3. 建物の管理費・修繕積立金(区分マンションの場合)。入居者から預かる共益費とは別物で、大家が管理組合へ払うお金です。しかもこの2つは、長期修繕計画に沿って将来上がっていく前提で設計されているのが普通です。買う前に、管理組合の長期修繕計画を見て「今後10年で毎月いくらまで上がる予定か」を確認してください。ここを見ずに買った人が、5年後に「手残りが半分になった」と言うことになります。
4. 火災保険料。年払い・数年一括払いが多いので、月額に割り戻して数えておきます。
家賃6万円の区分マンションなら、返済を別にしても管理委託料・管理費・修繕積立金だけで毎月1万8千円ほど出ていくのは珍しくありません(管理費・修繕積立金1万5千円+委託料3千円=「実質利回りの計算方法」のダミー物件と同じ数字です)。「家賃6万円の物件」ではなく「毎月4万円ちょっとの物件」として最初から考えておくほうが、判断を間違えません。
箱3:数年に一度、いきなりくるお金
賃貸経営の現金が詰まる原因は、ほぼここです。順番に見ていきます。
固定資産税・都市計画税(年に1回)
毎年春に納税通知書が届き、一括か4回の分割で払います。分割にすると1回の負担は軽くなりますが、支払いを忘れやすくなるという副作用があります。年額を12で割って、毎月よけておくのがいちばん楽です。
退去のたびにかかるお金(数年に一度)
入居者が出ていくと、原状回復の費用と、次の入居者を決めるための費用が同時にきます。しかも家賃はゼロの状態で、です。
原状回復は、管理の現場で見積書を見てきた感覚で言うと、単身向けのワンルームで数万円から十数万円、たばこの臭いや長期入居のクロス全面張り替えが絡むと20万円を超えることがあります。国が出している原状回復のガイドラインで大家と入居者の負担割合の考え方は決まっていますが、金額そのものの公的な相場統計は見つけられませんでした。自分の物件の見積もりを1度取っておくのが、いちばん正確です。
そして募集にかかるお金。仲介会社へ払う広告料(AD)が家賃1ヶ月分前後、これに仲介手数料が乗ることがあります。退去1回で家賃の2〜3ヶ月分が飛ぶ、と考えておくと計算がずれません。だから入居者に長く住んでもらうことが、どんな節約よりも効きます。
設備の寿命(10年前後で必ずくる)
エアコンと給湯器は、寿命が読める代わりに必ず壊れます。目安はエアコンが10年前後、給湯器が10〜15年。メーカーが交換部品を持っている期間にも限りがあるので、古い機種は「修理できないので交換」になります。
交換費用は、管理の現場で見てきた見積もりの感覚で、エアコンが本体と工事で10万円前後、ガス給湯器が15〜25万円ほど。物件の仕様や地域で動くので、これも自分の物件で見積もりを取るのが確実です。
ここで大事なのは金額そのものより、築年数から逆算していつ来るかが分かるという点です。中古で買うなら、購入前に「エアコンと給湯器はいつ設置されたものか」を売主か管理会社に聞いてください。設置から8年経っていれば、それは数年以内に確定で出ていくお金です。
で、毎月いくら残しておけばいいのか
ここまでの3つの箱を、毎月の行動に落とします。
家賃収入の15%を、生活費とは別の口座へ移してください。修繕と空室に備えるお金です。家賃6万円なら月9,000円、1年で約11万円。給湯器1台分が1年半〜2年ほどで貯まる計算になります。
はじめくん
正直おじさん15%という数字に公的な根拠はありません。退去1回で家賃2〜3ヶ月分、設備交換が10年に一度と考えたときに、破綻しない水準として置いている「型」です。きついと感じるなら10%からでも構いません。大事なのは率ではなく、家賃が入る口座と、備えるお金の口座を物理的に分けることです。同じ口座に入れておくと、人は必ず使います。
これは自分でも2戸を貸していて、実感として言えることです。分けていない時期は、修繕の見積もりが来るたびに「今月は苦しいな」と考えていました。分けたあとは、口座から出すだけの作業になりました。金額は何も変わっていません。変わったのは、判断のたびに迷わなくなったことです。
最初の1年でやると、あとが楽になる3つ
1つ目は、支出のカレンダーを1枚作ること。固定資産税がいつ、不動産取得税がいつ、保険の更新がいつ。1年分を1枚に書き出すだけで、突発的な支出のほとんどが「予定」に変わります。
2つ目は、設備の設置年をメモすること。エアコン・給湯器・給排水設備の設置年を控えておけば、交換時期は自動的に見えます。管理会社に聞けば分かることが多いです。
3つ目は、領収書を月ごとに封筒へ入れること。賃貸経営でかかったお金は、確定申告で経費にできるものが多くあります。管理委託料、修繕費、火災保険料、固定資産税、そして物件を見に行った交通費も対象になり得ます。あとでまとめてやろうとすると、まず思い出せません。月末に封筒へ放り込むだけで、翌年の自分が助かります。判断に迷うものは税理士か税務署に確認してください。
よくある質問
Q. 中古の区分マンション1戸なら、購入諸費用はいくら見ておけばいいですか?
A. 物件価格の7〜10%が一つの目安です(1,000万円なら70〜100万円)。仲介手数料・登記費用・ローン関係・保険・固定資産税の精算金に加え、半年〜1年後に不動産取得税が届きます。
Q. 毎月いくら貯めておけば安心ですか?
A. 型として家賃収入の15%を別口座へ。家賃6万円なら月9,000円で、給湯器1台分が1年半〜2年で貯まる計算です。率そのものより「生活費と物理的に分ける」ことが本体です。
Q. 退去が1回出るといくらかかりますか?
A. 原状回復+募集費用(AD)を合わせて家賃2〜3ヶ月分が目安です。だからこそ、入居者に長く住んでもらう対応が、どんな節約より効きます。
まとめ:今日やるのは、口座を1つ増やすことだけ
賃貸経営でお金が足りなくなるのは、儲かっていないからではありません。入ってくるリズムと出ていくリズムが違うのに、同じ財布で管理しているからです。
今日やることは1つです。修繕と空室に備える口座を1つ作って、次に家賃が入った日に15%を移してください。これだけで、給湯器が壊れた日の判断が変わります。
この記事を書いた人
賃貸仲介・賃貸管理の現場で20年。管理会社では責任者として現場の仕組みづくりを担当。宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。現在は自分でも2戸を貸しながら、大家さんの業務改善を仕事にしています。
「うちの場合はどうなの?」がある方は、お問い合わせフォームから匿名で質問できます。記事の形で回答します。
あわせて読みたい
- 賃貸経営とは?仕組みと始め方を現場20年が図解【初心者向け】(この記事のピラー)
- 賃貸経営のはじめ方 完全ガイド|失敗しない5ステップ
- 実質利回りの計算方法|広告の「表面利回り」を手取りに直す(買う前の計算=上流)
※本記事の金額は中古区分マンションを想定した目安です。物件・地域・時期により異なります。税務の判断は税理士・税務署にご確認ください。

コメント