この記事の結論
実質利回りとは、年間家賃から経費を引き、物件価格に購入諸費用を足して計算する「手取りの利回り」です。式=(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+購入諸費用)×100。広告に載る表面利回りは経費を引く前の「額面」で、実質に直すと半分近くまで落ちる物件は珍しくありません(この記事のダミー物件では7.2%→3.6%)。直すのは「分子から経費を引く」「分母に諸費用を足す」の2ヶ所だけです。
はじめくん
正直おじさん
はじめくん
正直おじさんそもそも「利回り」とは?
はじめくん
正直おじさん利回りとは、投じたお金に対して、1年間でどれくらいの収益が戻ってくるかを%で表した数字です。
銀行預金にたとえるのが一番はやいです。100万円を預けて、1年で利息が1万円つくなら、利回り1%。不動産投資では「預けるお金」が物件価格に、「利息」が家賃収入に変わるだけです。1,000万円の物件で家賃が年72万円入るなら、72万÷1,000万×100=7.2%。これが利回りの基本形です。
ここで1つだけ覚えて進んでください。同じ「利回り」という言葉に、経費を引く前の「表面利回り」と、経費を引いた後の「実質利回り」の2種類があること。物件の広告に載っているのは、ほぼ前者です。この違いが、この記事の本題になります。
「利回り7.2%」の物件、手元に残るのはその半分かもしれません
物件サイトに大きく載っている「利回り7.2%」。あの数字のまま儲かると思って買うと、高い確率で「思ったより残らない」が待っています。
先に結論です。広告に載っている利回り(表面利回り)は、経費を引く前の数字です。管理費・税金・空室の損をぜんぶ引いた「実質利回り」に直すと、半分近くまで落ちる物件が珍しくありません。この記事では、その計算を架空のダミー物件でそのまま見せます。式は2つだけ、電卓があれば5分で追えます。
私は賃貸仲介・賃貸管理の現場で20年働いてきました。物件を「売る側」と「管理する側」を両方経験して、いまは自分でも区分マンションを買って貸しています。売る側にいた人間として正直に言うと、広告が表面利回りを使うのは、その方が数字が大きく見えるからです。嘘ではありません。ただ、あれは「定価」の話なんです。
(※賃貸経営ぜんたいの地図は、「賃貸経営のはじめ方 完全ガイド」にまとめています。この記事はその中の「買う前の採算チェック」を深掘りするものです。)
表面利回りは、給料でいう「額面」
はじめくん
正直おじさん表面利回りの式はこれだけです。
表面利回り(%)= 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば1,000万円の区分マンションを月6万円で貸せるなら、年間家賃は72万円。72 ÷ 1,000 × 100 = 7.2%。物件広告の「利回り」は、ほぼ例外なくこの数字です。
給料にたとえると、表面利回りは「額面」です。税金も社会保険料も引かれる前の、いちばん大きく見える数字。しかもこの式には「ずっと満室」「経費ゼロ」という無言の前提が入っています。広告がこれを使うのは、計算が簡単で、誰が計算しても同じ値になり、そして大きく見えるから。業界の慣行であって詐欺ではありません。でも、買う側がこの数字で採算を考えてはいけない。見るべきは「手取り」のほうです。
実質利回りは「手取り」。直すのは2ヶ所だけ
実質利回りの式はこうです。
実質利回り(%)=(年間の家賃収入 − 年間の経費)÷(物件価格 + 購入時の諸費用)× 100
表面利回りとの違いは2ヶ所。分子から経費を引く、分母に買うときの諸費用を足す。これだけです。
分子から引く「年間の経費」は、区分マンションならおおむね次の顔ぶれです。
- 建物の管理費・修繕積立金(毎月、管理組合に払うお金)
- 賃貸管理の委託料(家賃の5%前後が相場。委託か自分でやるかの比較は「管理委託 vs 自主管理」で書きました)
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 空室の損(あとで詳しく)
分母に足す「購入時の諸費用」は、仲介手数料・登記費用・不動産取得税など。物件価格の7〜10%程度が一つの目安です。1,000万円の物件なら70〜100万円(この記事の計算では80万円と置きます)。この分も投じたお金なので、分母に入れないと利回りが良く見えすぎます。
ダミー物件で実際に計算してみる
はじめくん
正直おじさん架空の物件で、上の式をそのまま回します。
条件(すべてダミー):価格1,000万円の区分マンション/家賃 月6万円(年72万円)/購入時の諸費用80万円
年間の経費を積み上げます。
| 項目 | 年額(ダミー) |
|---|---|
| 管理費・修繕積立金(月1.5万円) | 18.0万円 |
| 賃貸管理の委託料(家賃の5%) | 3.6万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 7.0万円 |
| 火災保険料 | 1.0万円 |
| 空室の損(年5%=2年に1ヶ月強の空室を想定) | 3.6万円 |
| 合計 | 33.2万円 |
実質利回り =(72 − 33.2)÷(1,000 + 80)× 100 = 38.8 ÷ 1,080 × 100 ≒ 3.6%
表面7.2%が、実質3.6%。ちょうど半分です。盛った例ではなく、経費を普通に積んだだけでこうなります。
しかも、この3.6%にすら入っていない出費があります。退去のたびの原状回復や募集費用、給湯器の故障(交換で15〜25万円級)といった突発修繕です。さらに言うと、ローンで買う場合の返済もこの式には入っていません。利回りは「物件そのものの稼ぐ力」、返済まで引いた毎月の手残りは「キャッシュフロー」といって別の計算になります。広告の7.2%と、あなたの財布に残るお金の間には、これだけの段差があるわけです。
実質利回りでも見落とされる経費、ワースト3
管理の現場で家主さんの収支を横から見てきて「ここが抜けていた」と言われる経費は、だいたいこの3つでした。
1. 空室の損。満室前提がいちばん最初に崩れます。退去から次の入居まで、地域や物件によっては2〜3ヶ月あくことも普通にあります。空室がなぜ長引くのか、家主側で何を握れるのかは、別の記事で1本にまとめます。
2. 退去のたびのコスト。クリーニング、クロスの張り替え、鍵の交換、そして次の募集にかかる広告料。入れ替わりが1回あると、家賃数ヶ月分が飛ぶのはよくある話です。だから「利回りが同じなら、長く住んでもらえる物件のほうが強い」。
3. 突発修繕。給湯器とエアコンは、いつか必ず壊れます。壊れてから慌てないよう、私は年間家賃の5%くらいを「修繕の貯金」として最初から経費扱いで見ておくことをすすめています。
私はFP2級も持っていますが、正直なところ、この数字の感覚は資格の勉強では身につきませんでした。自分の物件で毎年確定申告をして、経費を1円単位で集計してきた経験のほうがずっと効いています。机上の計算にこの3つを織り込めるかどうかで、買う前の採算の精度が大きく変わります。
買う前チェックリスト:営業マンに聞く数字は5つ
はじめくん
正直おじさん気になる物件が出てきたら、この5つの数字を聞いてください。全部、聞けば普通に教えてもらえるものです。
- [ ] 管理費・修繕積立金の月額(値上げの予定があるかもセットで)
- [ ] 固定資産税・都市計画税の年額(納税通知書ベースの実額)
- [ ] 賃貸管理の委託料率(何%で、何をどこまでやってくれるか)
- [ ] 現況の家賃と、周辺のいまの募集家賃(昔からの入居者の家賃は相場より高いことがあり、退去後の再募集で下がる前提を見る)
- [ ] 直近の空室期間と修繕の履歴
数字がそろったら、営業マンの計算を待たずに自分の電卓で実質利回りを出します。というのも、「実質利回り」と言いながらどの経費まで入れるかは会社によってバラバラだからです。式を自分で持っている人は、どの営業トークが来てもブレません。
よくある質問
Q. 表面利回りは何%あれば買っていいですか?
A. 表面利回りだけでは判断できません。同じ7%でも経費と空室で手取りは大きく変わるからです。必ず実質利回りに直し、ローンで買うなら返済後の手残り(キャッシュフロー)まで確認してください。
Q. 実質利回りの計算に必要な数字はどこで手に入りますか?
A. 営業マンに5つ聞けばそろいます。①管理費・修繕積立金の月額 ②固定資産税の年額(納税通知書ベース)③管理委託料率と業務範囲 ④現況家賃と周辺の募集家賃 ⑤直近の空室期間と修繕履歴です。
Q. 不動産会社が出す「実質利回り」を信用していいですか?
A. そのまま比較に使うのは危険です。どの経費まで引くかの定義が会社ごとにバラバラだからです。同じ式で、自分の電卓で計算し直すのが確実です。
まとめ:広告の利回りで買わない。自分の電卓で買う
表面利回りは額面、実質利回りが手取り。直すのは「経費を引く」「諸費用を足す」の2ヶ所だけで、ダミー物件では7.2%が3.6%まで落ちました。
次の行動は1つです。いま気になっている物件(なければ物件サイトの適当な1件)で、今日この式に数字を入れてみてください。5分の電卓が、数百万円の判断ミスを防ぎます。
このオーナーズクエスト「学ぶ」シリーズでは、賃貸経営をゼロから、現場の数字で学べる記事を積み上げていきます。
- 「この物件、実質だと何%になる?」——価格・家賃・経費のわかる範囲を添えてお問い合わせフォームから質問いただければ、記事でお答えします(匿名OK。あなたの疑問が次の記事になります)。
- 書いている人ってどんな人? → 運営者プロフィール
- まず全体像から:賃貸経営のはじめ方 完全ガイド(この記事のピラー)
- あわせて読みたい:管理委託 vs 自主管理|管理会社の「中の人」が正直に比較
*※本記事の計算例はすべて架空のダミー物件です。管理委託料・諸費用・税額の水準は物件・地域・時期により異なります。実際の購入判断は、個別の物件資料と納税通知書等の実額で計算してください。*

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